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やまはカンタービレ

大学職員として、英文文書の作成や「ヒト」のパフォーマンスを最大化する仕組みづくりを推進しながら、復業としてブログでの発信や英文法講座などを行っています。アインシュタイン・アプローチを実践しています。人の生き方や個性、心理、性質などに強い関心があり、ブログで学んだことや気づいたことを発信しています。趣味はピアノとDDR(日本191位)です!!

演奏会アルバム① 東京交響楽団【名曲全集 第136回】

 ごきげんようYAMAHAです。

 

 今回は「演奏会アルバム」と題しましたが、本シリーズでは題名からも推測できる通り、コンサートを鑑賞した感想などを書いていきたいと思います。

 

 私の母は国立音楽大学卒のピアノ講師で、幼い頃から母の奏でるクラシック音楽を聴いて育ってきました。大学で一人暮らしをするようになってからはしばらく音楽から離れていましたが、社会人になってからはしばしばクラシックコンサートを聞きに行くようになりました。

 

 現在は川崎市に拠点を移し、昭和音楽大学ミューザ川崎などで行われるコンサートを鑑賞するのが、週末の楽しみになっています。

 

 コンサートに行くと、心が洗われるような感覚を味わえるだけでなく、ふとした時にこれまでパズルのピースだったものがつながることがあります。「あー、感動したなぁ」で終わりにしてしまっては、その時気づいたことや感じたことを正確に心にとどめておくことができません。

 

 せっかくブログを書いているので、音楽に触れた時の素直な気持ちを言葉にして、将来ふと懐かしくなった時に思い出せるよう記録し、また、二度と同じものが再現されることがなくても確かにその時生まれた音楽を、読者の皆さんにも共有していきたいと思っています。

 

 

 前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入ろうと思います。今回取り上げるのは、ミューザ川崎シンフォニーホールで開催された、東京交響楽団の「名曲全集 第136回」です。

 

 東京交響楽団は、1946年より続く歴史のあるオーケストラです。まだ出会ってから日は浅いですが、私にとっては少し思い入れのあるオーケストラです。

 

 その理由は、指揮者の堀俊輔さんが同団で長年活躍なさっていたからです。堀さんは、実は30歳で東京芸術大学に入学して音楽を本格的に学び、その後活躍の舞台を世界にまで広げているスゴ腕の指揮者です。

 

 堀さんは私にとって、音楽に関するロールモデルです。私自身、音楽活動に本格的に打ち込み始めたのはちょうど30歳になってからです。始めるのが遅すぎたのではないか、今さら音楽に打ち込んでもどうにもならないのではないかという気持ちが、常につきまとってきます。

 

 そのような不安を拭いされないでいた時に、堀さんに関する本に出会い、勇気をもらいました。ミドルエイジから本格的に音楽を始めても成功している人もいるんだ、と。本題ではないので詳細は割愛しますが、ご興味のある方は是非 堀俊輔「こんな僕でも指揮者になれた」をご一読ください。

 

 

 コンサートの話に戻りますが、今回参加してきたコンサートの概要は、以下の通りです。

演 奏:東京交響楽団

講演名:名曲全集 第136回

日 時:2018年4月22日 (日)

会 場:ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮者:ジョナサン・ノット

曲 目:ロッシーニ 歌劇「絹のはしご」序曲

    ロッシーニ ファゴット協奏曲

     ※ファゴット:福井 蔵(東京交響楽団首席奏者)

    シューベルト 交響曲 第6番 ハ長調

 

  私が今回のコンサートに行こうと思った最も大きな理由は、ロッシーニの「絹のはしご」が演目に名を連ねていたからです。

 

 私が小学生か中学生の頃、音楽講師の母は電子オルガンの合奏で「絹のはしご」を指導していました。母は曲の解釈を深めるため、また、指導用の音源をつくるために、家で何度も「絹のはしご」を弾いていました。

 

 その時はまだ、音楽への安心も薄かったこともあり、強い思い入れはありませんでした。しかしながら、成人してから改めてクラシック名曲100選で「絹のはしご」を聞いたときに、この曲の持つ、最初から最後まで飽きることのないドラマティックなメロディと、弦も管楽器もそれぞれが主役となってお互いを支え合いながらつくり上げる重層的なハーモニーに、心が震えました。それ以来、「絹のはしご」は私にとって最愛のクラシック音楽のひとつとなりました。以下に私のお気に入りの「絹のはしご」の動画リンクを貼っておきます。

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=MpZM5ZZrSEQ

 

 ただ、「絹のはしご」はベートーベンやチャイコフスキーなどの残したメジャーな曲と比較して、演奏される頻度はあまり多くありません。そのため、福岡県から神奈川県に引っ越してすぐに、川崎市内で「絹のはしご」が演奏されることを知った瞬間に、迷うことなくチケットを購入していました。

 

 そして、コンサート会場で生で聞いた「絹のはしご」は、周波数が不自然なほど高い木管楽器やための短さなど独特の演奏ではありましたが、それでも私の語彙力では表現しきれないほど素晴らしいものでした。自然と目から汗が流れ出たのは、言うまでもありません。

 

 

 

 加えて、私が興味深いと感じたのは、プログラムの選曲でした。ロッシーニの「絹のはしご」、ロッシーニの「ファゴット協奏曲」と続いた後に、シューベルトの「交響曲 第6番」が配置されていたのです。私は、なぜロッシーニを2曲続けた後にシューベルトの曲を持ってきたのだろうと疑問に思っていました。そして、その答えはパンフレットの「曲目解説」の中にありました。以下は、パンフレットからの引用です。

 

ロッシーニ:歌劇「絹のはしご」序曲】

 ジョアキーノ・ロッシーニ(1792~1868)は、1810年に初めてオペラを上演してから、1829年に最後のオペラ「ウィリアム・テル」を初演するまで、40作近くのオペラを創作したイタリア・オペラの作曲家です。

 ロッシーニが20歳の年の1812年には6作のオペラを初演しますが、その1作が「絹のはしご」です。

――――――――――――中略――――――――――――

ロッシーニ:【ファゴット協奏曲】】

  ロッシーニは76年の人生を送りますが、37歳で発表した「ウィリアム・テル」を最後にオペラの作曲から引退してしまいます。その後、料理研究に力を注いだことは良く知られていますが、音楽の仕事もしており、オペラ以外の作品を作曲することもありました。ファゴット協奏曲は、そんなオペラ作曲引退後に作曲された1曲です。ロッシーニが名誉顧問を務めていたボローニャ音楽学校の学生ナツァレーノ・ガッティ(1822~93)の最終試験のために書いた作品と考えられています。ガッティが死去した歳の新聞記事などには、ロッシーニが彼に「試験のための協奏曲」を作曲したと書かれているものの、楽譜が見つからず幻の作品でした。ところが1990年代後半に、マントヴァ近郊の町オスティーリアの図書館が所蔵する写本コレクションの中から、ロッシーニの名が記されたファゴット協奏曲の楽譜が見つかったのです。ロッシーニの自筆ではなく筆写譜ですが、これがガッティのための協奏曲だとみなされ、現在、世界のファゴット奏者の新しいレパートリーとなりつつあります。

――――――――――――中略――――――――――――ー

シューベルト交響曲 第6番 ハ長調 D.589】

 ロッシーニのオペラはイタリアの地域のみならず、ヨーロッパ全土で人気となりました。ウィーンもそうです。モーツァルトがイタリア語でオペラを書いたように、ウィーンはもともとイタリア音楽、イタリア人音楽家を好む街でしたが、1816年秋にイタリアのオペラ団がやってきてロッシーニのオペラを初上演するとたちまちブームとなり、1822年にロッシーニ本人がウィーンを訪れ「ロッシーニ・フェスティバル」が開催されると大フィーバーが巻き起こりました。ロッシーニのあまりの人気にベートーヴェンさえ拗ねてしまい、「第九」の初演はウィーンではなくベルリンでやろうかと考えるほど、ウィーン中がロッシーニに夢中でした

 そんなウィーンで、宮廷楽長アントニオ・サリエリ(彼もイタリア人)のもと1816年まで作曲を学んだフランツ・シューベルト(1797~1828)も、ロッシーニのオペラ「タンクレディ」を観て感銘を受けました。その余韻のなかで作曲した作品が、交響曲第6番です。1817年10月から1818年2月にかけて作曲に取り組みますが、途中の11月にはロッシーニ風の「イタリア風序曲」を2曲も作曲するほど、ロッシーニに魅せらていた時期に書かれた交響曲です。当時シューベルトは20歳~21歳。彼が崇拝していた作曲家はもちろんベートーヴェンであり、交響曲にはベートーヴェンの影響が強く見られますが、第6番はロッシーニの香りも漂ってきます。イタリア風シューベルトの音楽をお楽しみください

 

 以上から、ロッシーニがオペラ作曲家として初期に残した作品から始まり、次にロッシーニが晩年に教育者として学生のために書き下ろした作品が続き、最後はロッシーニの楽曲が大きな影響を与えた次世代作曲家の「ロッシーニ風音楽」で締めくくられるプログラムである、と解釈することができます。「連綿と受け継がれるロッシーニの記録」とでも題せましょうか。

 

 私は、好きな作曲家は誰かと聞かれたら真っ先にロッシーニが出てくるので、前半のプログラムを楽しめたのは言うまでもありません。ただ、いい意味で予想外だったのは、シューベルトの曲には馴染みがなかったにもかかわらず、終始楽しく聞くことができたこととです。実際に聞いてみると、確かに「ロッシーニの香りがする」音楽で、冗長な部分がない飽きのこない心地の良いメロディでした。

 

 そんなわけで、今回の「名曲全集」は、大好きなロッシーニの楽曲を堪能できただけでなく、ロッシーニにまつわる新たな側面を発見できた意義深いコンサートでした。

 

 東京交響楽団川崎市と提携しておりアクセスしやすいため、これからもタイミングが合えば演奏を聞きに行こうと思います。また、今後参加する演奏会についても、本ブログで言葉にして皆さんに共有していこうと思いますので、引き続きお読みいただければ幸いです。

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました!!